忍者ブログ
色んなことをつらつらと。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『紅』の第二話です。
第一話ですでにやっちゃった感はあるけど、気ニシナ~イ!
ってか、あれだけの条件と設定がそろっていたら、ドロドロな話もアリだと思うのですが・・・ねぇ?

さて。口をすっぱくさせて言わせていただきますが、この作品は、主に翔→千里→風で、シリアス・ダーク・多少エロ・稀に鬼畜なお話です。実年齢・精神年齢がともに18歳以上で、シリアス・ダーク・エロ・鬼畜がOKな方、尚且つ、キャラが違っても大丈夫という方のみ、ご自身の責任のもとにご覧ください。




 *****


どうもこの一週間、千里の様子がおかしい。

言葉数も、笑顔も、少し前と比べて圧倒的に少なくなった。
食欲もないようだし、自室に引き籠る時間が増えている。

その変化は、決して俺だけじゃなく、
猛も、優も、智も、明も、
はっきりとは口にはしないが、感じ取っているようだ。
彼らの言動の節々に、彼女を心配し、労わる様子がうかがえる。

先日相談した風に、
「誰だってこういう時もあるだろう」と諭されたので、
触れないようにしていたが、
一週間が経ち、千里は明らかに変わり果てていた。

今日も朝から、虚ろな目で、その様子は明らかに尋常ではない。
さすがにこれ以上は放ってはおけなかった。

 


 


「なぁ、千里。最近・・・何かあった?」

意を決した一週間目のその晩、
俺は、リビングから出てくる千里を廊下で捕まえ、声をかけた。

すると、千里は、ちょっと驚いたような顔をして、
「季節の変わり目で風邪でもひいたかな?」と力なく笑った。

「だったら、今から緊急外来の病院行くぞ」とその手をとると、
千里はそれを振り払い、
「大丈夫だから」と伏し目がちに言った。

大丈夫?

何が大丈夫なんだよ?

日に日に細くなっていくその身体。
日に日に光を失うその瞳。
そんなのを見せつけられて黙っていられるわけがない。


「千里!」


俺の前から逃げるように立ち去ろうとする千里の肩を、
俺は追うようにつかまえた。

と、その時。

反動で一瞬肌蹴た彼女のパーカーの下、
白い首筋に、赤い歯形を見つけた。

虫さされでも、引っ掻き傷でも、内出血でもない。
明らかに誰かに噛まれたと思われる歯形。
昨日今日のものだと思われる新しい瘡蓋。


「千里、その首の傷───」

「言わないでッ!」

一体どうしたんだと問いかけようとした俺を、
千里が声を荒げて制止する。

その目には、怒りとも、悲しみとも、
絶望ともとれる色が浮かんで揺らぐ。

思わず、俺が彼女の頬に手を伸ばすと、
千里は小さく震えながら、呻くように言った。

「私に触らないで」と。

そして、俺と目線を合わせようとすることなく、
階段を駆け上がり、自室に逃げ込んだ。

そんな彼女を無言で見送る俺の中で、
なんとも形容しがたい感情が蠢いていた。

 

***

 

時計は朝の4時過ぎを指していた。
目を閉じると、暗闇の中で浮かぶのは歯形の残る千里の首筋。
結局、俺はあれからずっと、千里のことで頭がいっぱいだった。

現に今もこうして、なかなか眠りにつくことができず、
ただいたずらに時を過ごしている。

千里を苦しめるものは何なのか。
千里を追いこめているものは何なのか。
そして、あの歯形は一体、何を意味するのか。

考えれば考えるほど、思考は混乱する。

俺はとりあえず気分を変えようと、
ベッドから起き上がり、寝室を出た。

庭でも散歩して、とにかく頭を冷やしたい。

だが、俺は。
一階へとつづく階段を降り、
庭に繋がる裏玄関のノブに手をかけたところで足を止めた。
背後で物音がしたからだ。

たぶん、地下室へ続く階段の方からだろう。

自分でも、なぜそのような行動をとったかは分からない。
けれど、俺は、物陰に息をひそめて、状況をしばらく見守った。

すると、地下からの階段を、一際険しい表情をした風が上ってきた。
なぜこんな時間まで地下にいたんだろうか。
しかも、何か争ったような服装の乱れ。


激しい胸騒ぎがする。

俺は、風が二階に上がり、自室に入っていくのを見届けてから、
ひとり地下へと向かった。

 


この城にきてもう充分な時が経つが、
それでも地下の雰囲気は未だ馴染めない。

しかも、ただ単に地下と言っても、
そこには幾つもの部屋があり、その存在は知りつつも、
足を踏み入れたことのない部屋がほとんどだった。

それでも、俺は一室一室確認しながら、
風が今までここにいた理由を捜し求めた。

が、別にどの部屋にもこれと言って異変があるわけでもなく、
諦めかけたその時。

───こんなところに、部屋なんてあったっけ。

廊下の奥に置かれた置時計の影に、俺はもう一つの扉を見つけた。
しかも、それは、かすかに開いている。


ぞくり。


冷たい汗が背筋を伝う。
激しい自分の鼓動が耳元で聞こえる。
こんな時に感じる嫌な予感は、妙に当たるから恐ろしい。

俺は震える手で扉を開いた。

 

そして。

 

目の当たりにした無常な光景、
鼻をつく欲望の匂いに血の気が引いた。

そこには、一糸まとわぬ千里が、
まるで捨てられた人形のように横たわっていた。

暗闇に浮かぶ濡れた白い肌が艶めかしく、それでいて残酷で。

この部屋で一体何が行われていたかは容易に想像がついた。



「───千里ッ!!」



心の奥で蠢いているこの感情は、怒りなのか、悲しみなのか。
それとも、身勝手な嫉妬なのか───。

微動だにしない彼女を抱き起こし、
すべてが夢であって欲しいと神に祈った。


 <Vol.3へつづく>

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
[14] [13] [12] [11] [10] [9]
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
ヤザワ
性別:
女性
バーコード
カウンター
最新トラックバック
忍者ブログ / [PR]
/ テンプレート提供 Z.Zone