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警備員のおっちゃんに二度見されちゃった(笑)
さて。私の書く話って、毎度毎度、糖度が低いような気がする・・・。
今回も糖度は低いですが、でも、母さんが愛されてます。
*****
ある日の夕方。
千里がめずらしく風邪をひき、熱を出した。
「ごめん、お夕飯はいらない」と、気だるい身体を引き摺って自室に籠もる。
そんな千里のもとに、一番に駆けつけたのは、五男の智。
「ったく、何やってんだよ」と口調はキツイものの、
明らかに心配している表情を浮かべ、千里に風邪薬を差し出した。
次に、智と入れ違いで駆けつけたのは、末っ子の明。
「自己管理がなっていないよ」と可愛くないことを言いつつも、
「早く良くなってよね」と千里の布団をかけ直した。
そうして、明の後に駆け付けたのは、四男の優。
「大丈夫?本当に大丈夫?」と少々慌ててた様子で、
「コレ、結構良いんだ」と千里の額に冷却シートを貼りつけた。
それから、何やら壺を抱えて駆け付けたのは、二男の猛。
前の訪問者である優が貼っていった冷却シートを剥がし、
「こっちの方が効くからよ」と千里のこめかみに壺から出した梅干しを貼った。
そうこうして、猛の後に駆け付けたのは、長男の風。
梅干しをこめかみに張り付けた千里を見てゲラゲラと笑いながら、
とくに何を言うわけでもなく、中華粥を置いていった。
一番最後に駆け付けたのは、遅くまで仕事のあった翔で、
その頃には大分熱も下がった千里から、兄弟たちの個性あふれる見舞いの様子を聞かされ、
ひとしきり笑った。
だが、笑いながら、自分も他の兄弟たちと同じに違いない、と思った。
翔は、ひとつ静かに深呼吸をすると、ゆっくりと腕を伸ばし、千里を自分の方へと引き寄せた。
「風邪うつっちゃうよ!」と慌てる千里に、「良いよ。俺がもらってやるよ」と笑う。
俺も、アイツらも。
あまり愛された記憶がないから、不格好な愛情表現しかできないのだ。
「千里」
「何?」
「俺達の愛、感じてる?」
「どうしたの?急に」
「いや、ちゃんと伝わってるかな、って思ってさ」
「伝わってるよ。風邪で身体はツライのに、心はとっても満たされてる」
「そっか」
ふわりと笑う千里に、翔はうんうんと頷いた。
どうやら、不器用な愛でも、千里はしっかりと受けとめてくれているようだ。
翔は満足そうな笑みを浮かべ、彼女の唇にそっと口づけをした。
不格好な僕ら
それぞれの愛のカタチ