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初風→千里。
勢いだけで書いてしまったので、ドラマ本編とつながらず(汗)
多分5話後かなぁ、と。
年齢制限はないのですが、内容がちょいダークな上、風が病んでて少し怖いです。
苦手な方は読まないで下さい。
いやー、それにしても。
あのメンバーと設定で、昼ドラ並みのドロドロストーリーを書くのも面白いかも。
連載でやってみようかなぁ。需要はないだろうけど。
妄想は膨らむ一方です。
*****
「・・・どうして?・・・・・どうしてこんなことするの?」
千里の大きな瞳が、信じられないとばかりに風を見上げる。
しかし、風は一向に動じることなく、その目元に笑みを湛えたまま、
再び唇を千里の白い首筋へと押し当てた。
「・・・っ・・・ぃや!放して・・・!」
震える声で千里は訴える。
掴まれた両手首が痛い。唇が這う襟首が熱い。
けれども、風はそんなことはお構いなしに、
今度はわななく千里の唇を捉えた。
風の舌が、その味を、その形を堪能するかのように、
恐怖で動けない彼女の唇をなぞる。
いつもの強気な千里とのギャップが、風は可笑しくて堪らない。
彼は。
初めて会った時から、千里を快くは思っていなかった。
自分と同じような闇を抱えながらも、澄んだ瞳を持つ千里が苦手だった。
その真っ直ぐな視線を向けられるたび、
世間に歪められ汚れた自分が、真っ向から否定されたような気がしてならない。
第一、世界が滅びていくこの家に、彼女の純粋さも強さも必要ないのだ。
滅びるものは滅びてしまえばいい。
たとえ、その世界とともに、自分自身が滅んでも、だ。
それが運命というもので、いつだってそう自分に言い聞かせ生きてきた。
否、滅びるからこそ、これまで生きてこられたのだ。
ならば。
俺がすることは一つだ、と風は思う。
千里がこの世界の崩壊を邪魔するのであれば、
彼女の汚れのない光を、いっそ俺の淀んだ闇で侵食させてしまえばいいのだ、と。
「ここなら、叫んだって誰も助けには来ない。ねぇ、どうする母サン?」
ジーンズ越しに千里の太ももを撫ぜ、風は今度は探るように深く口づけをした。
「・・・んんっ・・・」
酸素を求める千里の口を執拗に塞ぎ、彼女をゆっくりと追いこむ。
千里の瞳が絶望の色に染まれば染まるほど、風は嬉しくて仕方がない。
さあ、俺を憎め。
そして、こうなるに至った自分の人生を恨め。
闇に突き落とされたものが、光になんてなれるわけがない。
闇に突き落とされたものは、所詮、闇の中であがき続けるしかないのだということを思い知れば良い。
どんなに叫んで喉を嗄らせても、どんなに足掻いてその指先を血で染めても、
闇に産み落とされた限り、その目前にはいつだって深い闇が広がり、果てしなく続いていくのだ。
諦めも絶望も飲み込んで、願うことも祈ることも封じて、
漆黒の淀みの中で全てを蝕まれながら、世界の終わりをただ切々と待ち続けるしかないのだ。
ずっと俺が────。
ずっとそうであるように────。
小さくほくそ笑みながら、風が千里の洋服に手をかけたその時。
唇が何かに濡れたかと思うと、風の口内に塩辛い味が広がった。
──涙?
とうとう泣かせたかと思い、千里を見ると、なぜか当の彼女は驚いた瞳で風を見上げている。
その目には涙は溢れてはいない。
なら、いったい誰が──。
思考回路が止まった瞬間、思いがけず、小さな千里の手が風の頬を包んだ。
「───どうして?」
「──え?」
「───どうして、風が泣くの?」
「────俺が・・・?」」
「どうして風が───そんな辛そうな目をするの?」
────いったい、何を言ってるんだ?
そう聞き返そうとしたが、風は声がうまく出せなかった。
その代わり、一筋の涙が己の頬を伝っていくのを、今度ははっきりと感じとる。
「──ねぇ、風・・・?」
先ほどまで剥き出しにしていた敵意が嘘のような、千里の至極柔らかい声。
風を慈しむように、千里の指が彼の涙に触れる。
「もう自分を傷つけないで」
深く暗い地底に差し込む一筋の白い光。
「こんなことしなくても、風の居場所はちゃんと私の心の中にあるから──」
黒く蠢く闇の中から、風が震える手を伸ばすと、その光はふわりと笑った。
幾度となく喉を嗄らしても、幾度となく血を流しても、
いつだって目前に広がっていたのは、果てしない闇。
闇に突き落とされたものが、光になんてなれるわけがない。
闇に突き落とされたものは、その中であがき続けるしかない。
そう思っていた。
──しかし。
この光だけは。
それをも浸食しようとした闇を、優しく照らして────。
ああ、光を誰よりも求めていたのは、俺なのかもしれない。
温かい光に抱かれて、風は静かに泣いた。
侵食
闇は光へと